それにあわせて、隣町に帰っていくカラスの群れが、かあかあ、と鳴いていたくらい、でかい声だった。

でもそれで、俺はかなり安心していたんだ。

結局、正婆の家訪問は30分たらずで終わった。

舞は最初から最後まで非のうちどころのない、いい感じの十五歳、だったし、正婆も始終にこにこしていて、木崎の杞憂は杞憂に終わってくれた。

ただ、ひとつ、ひっかっかることがあるとすれば、正婆が舞を家の中にいれてくれなかったことくらいだった。


「そりゃあ、外からきたもんだもの、いくら正婆は舞ちゃんを気に入ったからといってもそれは無理だろうな」

佐藤はインスタント焼きそばをほお張っている。

俺がもってきた差し入れだ。

佐藤んとこは有機栽培農家で有名だから、インスタントラーメンの類は毒と分類されていて家中禁止だ。

だから、ときどきこうやってもってきてやる。

まあ、佐藤がうちにきて食べまくってることもよくあるけれど。

「だってさ、薬師んとこの末っ子なんて、正婆に気に入られなくって、山のチャシにさえしばらくあがれなかったんだからな。‘ここらへん’で生まれて育っててもそんなんなんだから、家に入れないくらいは問題なさすぎ」

「まあな」

俺はさっき佐藤の母さんがもってきれくれら100パーセントオレンジジュース有機栽培を、ごくりと飲んで考える。

ほんとうは正婆の居間の壁にあったイヨマンテの壁掛けを舞にみせたかったんだ。

あれを見て、舞がどういう反応を示すかをみかったのだと思う。