まだ夕日になりきっていない太陽が西の空に、‘ここらへん’特有の鈍い黄金色で、ある。

二つの川に囲まれているから、湿気が多い。

山の端の、とくに背中のほうにあたり正婆の家のあたりは、いつも低い雲に覆われえいる感じだ。

だから、太陽も水蒸気越しにみることになる。

「むかしは戦いのあった場所じゃからな、ちょっと掘ったりすると、出てくるんじゃよ」

「人骨とか? ですか」

襟巻きの木の枝を髪にひっかけながらも、舞は懸命に正婆についてあるく。

俺はアイと遊びながら、二人のすこし前を歩いていたけれど、髪にきがついて、走ってもどった。

細くてからまり易い舞の髪を、丁寧に枝から解放す。

「人は人でも骨ではなくてな、心よ」

「こころ?」

正婆は蓬が群生している場所でふと立ち止まると、俺に、ちょっと刈ってくれ、と手で合図した。

俺は鞄を地面に置いて群生の中に静かにはいる。

今朝一番上に出たばかりの若い葉を、人差し指と親指でちょいちょいとつんでズボンから引き出した、シャツのすそに入れていく。

「そうじゃ、心。心が沢山出てくるんだな」

「へええ。それって骨より怖くなくていいですね」

正婆は一瞬、舞の顔をほうけたように眺めたけれど、次の瞬間には、こんだらめんこいメノコじゃのお、といって、かっかっか、と高笑いしていた。