俺はすこし考えた。

ここらへんで正婆に舞をきちんと紹介しておくのは悪くない感じがした。

メコンマコイを作るためにも。

「じゃあ、放課後によってみるか」

木崎が、げっという顔で俺をみる。

「大丈夫だって。オプニカもみてるし問題ないさ」

舞は、やりい、と小さなガッツポーズをし、木崎は、まあね、とうなずく。

「それに、正婆はもう俺たちが来ることをしってるよ。夢なんかにみてさ」

「本当にサイキックなんだ」

「サイキックっていうか、トゥークだからねえ」

木崎の家は蕎麦屋だ。

正婆は蕎麦好きだから、よく顔をあわせるんだろう。

きっと正婆の細かい感情の起伏なんかも図れるに違いない。

「たぶん、問題ないよな、木崎」

改まって尋ねられて木崎は、まあね、と肩をすくめる。

「今日って月、半月過ぎてるじゃん。まるっきり半分を超えるとちょっと不安定かなって思うけど、トゥークだしね。とりあえずは、ね」

木崎は細い銀縁のめがねを人差し指ですっとあげて、笑った。

木崎くんって、ハリウッドスターのなんとかに似てる、と以前舞が騒いでいたのを思い出して、俺は不機嫌になる。

「じゃ、決まりだね」

当人は、はしゃぎまくって、ゴミ箱を二つもひっくり返してたけれど。