「勉強、全然してないよね」

生徒会室でうたた寝をしてたら、舞におでこをたたかれた。

隣の机で学祭の予算を整理していた書記の木崎が、仲いいっすよね、とからかう。

でも、照れるのは俺ばかりで舞はにこりともしない。

お金足りそう?なんて真剣に帳簿をのぞいている。

木崎はまんざらでもない様子で、けっこうきついっすよ、白川さんもチャリティーでなんかやってくださいよ、なんていっている。

「イワクラのお知らせプリント、いい感じだったね。あの文様って描くときの決まりとかってあるの?」

すっかり慣れたふうに舞も話している。

俺はぼんやり、これで舞がメコンマコイを受け取ってくれたら、もしかして、一年なんかじゃなくて、ずっとここにいてくれるんじゃないかな、なんて妄想してしまう。

明日、親父と木を探しに行く約束をしてるせいだ。

「決まりっていうか、基本の柄がいくつかあって、あとは描く人間のセンスでちょっと変えたり、すっごく変えたりするんだ」

俺が答えると、やっぱ一番の書き手は、正婆ですよね、と木崎が付け加えたくれた。

「ほら、事故のこと教えてくれたお婆さんだよ」

舞は、ああ、と声をあげた。

「お礼したと思ってたの。近くに住んでるのかな?」

「近くっていうか、山の反対っすよね。会長」

さすがに、続のトゥーパの住所はいいにくいのか、木崎は俺にふる。

「文様のこととかも聞きたいかも」

舞は、なんとしてでも正婆に会いたいオーラを出しまくっている。