結局、今回は舞の部屋にはあがらなかった。

親父さんがいたのだから、当たり前といえば当たり前だけれど。

俺は親父さんがたっぷり揚げてくれたビーフコロッケを腹いっぱい食い、またタッパーにつめるだけつめてもらって、まだ薄明るい空気の中を家へと戻った。

「じゃ、明日」

親父さんの横で手を振る舞が、妙に少女っぽくって、かなりよかった。



「今度、白川さんを食事に招待せんとならんなあ」

もって帰ってきたコロッケを、ご馳走続きだな、と喜びながらあっという間に食いきった親父は、食後の、らうらう茶をのんで、そういった。

「なにご馳走するのさ。俺、作れるもの、限られてるし」

「気持ちだ。気持ち。そんなたいしたご馳走はあっちも期待しないぞ」

らうらうの匂いは不思議だ。

煎じているときには全然あがらないのに、カップに移して飲む寸前に、狙っていたかのように強く立ち上がる。

ー効かせる人間がわかるんじゃな。こいつを治すぞおっいう、らうらうの気合の現われじゃー

正婆にかかると、なにもかもが、魂をもっていることになってしまう。

まあ、それはそうなんだけど、時折、忙しい毎日に忘れてしまいそうになることは多い。

だから律するために、オプニカやイワクラがあるんだけど。

「あの埴輪、いや、湯本さんは、じゃあ、おまえをとくに誘わなかったんだな」

「ああ、うん。イワクラのこととか知ってて不気味だったけどね」

「あ、それは俺がいった」

「え?」