「超不気味」

舞が白いシャツとジーンズ姿の小柄な後姿を見送りながら、ぼそっといった。

「こら、舞。失礼だろ」

とりあえず、という感じで親父さんがたしなめる。

でも、そういう親父さんの顔にも、帰ってくれてほっとしている色がありありと浮かんでいる。

「まあ、淳くんあがっていって」

ほんとうに安堵している口調で誘われておもわず、はい、とスニーカーを脱いだ。

舞をちらっとみたけれど、別に反対している感じじゃなかったし、OKだ。

「名指しで電話かかってきちゃってね」

昨日はシチュウご馳走様でした、とか、親父も喜んでました、等のお約束の挨拶が終わるなり、舞の親父さんはすこし薄くなりかけた、おでこと頭の境界線を舞のもってきたタオルでごしごしふきながら、話はじめた。

「どうしてわたしの名前を知っているのか聞いても、ネットでみたくらいしかいってくれないしね。どうやってとりつけたのか、市の偉いさんの紹介状もついてて・・・いやあ、参ってるよ。じっさい」

昨日と同じアイスコーヒーが出てきた。

でもなんとうなく昨日よりも苦い。

これ、昨日とおんなじ? と舞に小声できくと、うん、とあっさりかえってくる。

「まだ、来たばかりで仕事にも慣れてないのに、お客さん、案内しろ、だからね。いや、さすがにまいった」

親父さんは昨日、病院でみたよりもすこし老けてみえた。

この二日でずいぶんと疲労したんだろう。

舞は大人しく、親父さんの話をきいている。コーヒーのおかわりなんて気にしながら。