「俺、ちょっと白川さんち、いってくるわ」

「ちょっと待て」

とめられるかと思ったのに、違うようだった。

親父は台所の鍋から出がらしの、らうらう、を取り上げると、二、三度水切りして、紙につつんだ。

「これ、ポケットに入れとけ」

「サンキュ」

俺はスニーカーをつっかけるのももどかしく、けんけん、しながら、玄関を出た。

こんな貧乏っちい整骨院になんの用なんだよ。

玄関横の小さい看板に、思わず聞いたくらい、たぶん、焦ってた。




「じゃあ、二人はつきあってるのねえ」

玄関の扉をたたいて、こんにちわ、といったとたん、中から、楽しそうな声がして驚いた。

湯本さんの声だ。

玄関の中で、たぶん、いま、靴なんかを履いている。

「あら、淳くん」

すぐに扉が開いて、やはり靴を履いていたらしい湯本さん、そして、舞と舞の親父さんが俺よりもずっと驚いた顔で現れた。

すげえ、タイミング悪かったかも。

佐藤をうらみながら、俺は、さっきはどうも、といちおうの挨拶をする。

舞が、どうしてきたの? と目で非難している。