でも、舞は、たぶん、勘が鋭かった。

大人たちが心配していた通りに。

だいたいの案内も終わり、役場前の児童公園に俺たちはいた。

そこから舞の新しい家までは、ほんの数十秒だ。

舞の親父さんが今日から働いているはず役場はひっそりとしていて、車寄せにうっそうと茂る木々と、玄関まわりに彫り付けられた植物の文様だけが妙に生き生きとしてみえた。

役場は橋のすぐたもとにある。

そして精霊の木以外の木々で囲まれている。

だから、ユーカラの風もここではほとんど感じられない。

精霊の木以外の木は、‘ここらへん’の気を遮断し、外の気を取り込み、保ちやすくするからだ。

俺は、じゃあ、といった。

明日学校で、と別れようとしたときだった。


「でもね。なんか、変なんだよねえ。ここらへんって」

舞が思い切ったようにいったんだ。

「一昨日ここにきたときなんだけど、二つ目の橋の真ん中くらいから急にぞっとするくらい寒くなったんだもの」

「そりゃあ、二つの川に囲まれてるんだから、寒いと思うよ」

俺は内心どきどきしながらも、そっけない感じで答えた。

「そうかもしれないけどね、これみて」

そういうなり、舞はくるっと俺に背をむけると後ろ髪を片手であげた。

褐色の首筋が目の前ににゅっと出てきた。

「ここんとこがね、その橋の真ん中過ぎたときからずっと痛いんだよね。小さい針でちくちく刺されてるみたいな感じなの」

細い首には黒子があった。

5つの黒子が星の形に並んでいた。

ゴボウセイ。

俺は思わずつぶやいた。

「ごぼうがどうしたの?」