「なんで佐藤なわけ?」

親父が予想とおりに渋ったので、俺が恐る恐る出てみると、玄関につったっていたのは、佐藤だった。

すっかり癖になったみたいで、また耳の絆創膏をいじっている。

「なんではないだろうが。せっかく、フリーライターさんの動向を教えてやろうと思ってうよったのにさ」

佐藤は野球部のユニフォーム姿で、鞄を左手に、グローブを右手にもつといういでたちだ。

「なんだ佐藤の坊か。あがって、らうらう、飲んでけや」

チラッとのぞいた親父は、来客が湯本さんではないことがわかって、上機嫌だ。

俺は、あがれば? と目でうながした。

あ、急いでるんで、と佐藤も目で断る。

「あのライターさんさ、白川んちにいったぜ。いまもいるんじゃん」

「へ?」

舞とは校門を抜けたところですぐに別れていた。

「なんか、おまえたちがいなくなってから、すぐに役場のほうから白川の親父さん? すっげえ顔そっくりのおじさんが走ってきて、とにかく家へ、といってつれってたぜ」

「まじ?」

「嘘ついていいことアンの課よ。俺に」

佐藤は投げうやりにそういうと、あ、イワクラに俺、あれだすわ、去年振られた女からもらってたセーター、いいよな、と言い捨てて、走り去っていった。

「佐藤のぼんがもてるのか?」

親父が後ろでわけのわからないことをいっている。