「だから、母さんの親類だっていうんだ。だから、取材にきたってな」

親父はふうっと大きなため息をついた。

鍋がかたかたとうるさい。

俺は条件反射的に火をとめ、蓋を取り、鍋の中身を用意してあったマグカップに注ぐ。

親父はそれをじっと見つめている。

らうらう。可愛い名前だよな、なんてのんきにつぶやきながら。

「母さんってずっと、‘ここらへん’の血筋じゃなかったの?」

「血筋ださ。母さんの母さんは正婆のいとこだし、母さんの父さんは薬師のじじいのこれもいとこだ」

「じゃあ」

「その前はわかんね」

親父は熱い茶を、顔をしかめてぐっと一口のんだ。

ふわっとあたり一面に雪笹の甘酸っぱいような匂いがひろがった。

「もしかしたら、俺のじいさん、おまえの曾じいさんあたりの筋が内地に行ったという可能性はなにきしもあらずだ」

「でも、それってすっごい遠くない?」

「すっごい遠いさ。でもな、あれだけ似てたらな」

親父はそこまで言うと、あとは黙ったまま、茶を飲み続けた。

でも、あれだけ似てたら、下手したら、取材OKしてしまう。

そういうことなのか?

親父に確認しようとしたとき、ころあいを見計らっていたみたいに、キンコーン、と呼び鈴が鳴った。