「自分勝手だ」

「なんだ? 俺がか?」

親父が後ろにいた。

いや、そういうんじゃなくて、と焦る俺の頭をでかい手でごつごつと撫でる。

親父にこんなふうに撫でれられるのは久しぶりで、俺は思わず、おとなしくしてしまう。

「埴輪みて、びっくりしたんだろ。そっくりだもな。母さんに」

泣きたくなった。

もう15だ。それはできない。

「あれ、なに? なんで学校までくるん?」

「熱意だろ」

親父は泣きそうな俺をわかっているのかいないのか、撫でまわすのをやめない。

「熱意っていうのはときには大きなお世話だからな」

親父はなにかを考えているような顔つきで、なおも撫でつづける。

いい加減、頭がかゆくなってきて、俺は、もういいよ、と顔をくっと引いた。

「これも熱意だったかなあ」

とんちんかんなことをいって親父は、ふはは、と笑う。

「あれな、埴輪な、親類だっていうんだ」

「え?」

笑ったままの親父の顔をみつめて俺は聞き返す。

鍋の中のらうらうはもういいはずだ。

早くとりださなきゃと思うのに、親父の次の言葉をきかなくては体が動かない。