ふと見ると、グランドにいる連中も、下校途中の連中も、教室の窓からでさえ、みんなが俺たちの様子をうかがっている。

職員室の窓から安田の禿げ頭までみえる。

みんな、いままでの経験からマスコミ系には警戒心が強いんだ。

俺は舞にちょっとうなづいてみせてから、埴輪さんにきちんとむかった。

「はに、いや、湯本さん。それで、どういったご用件なんでしょう」

「お父様に取材をお願いしたんだけれど、断られてしまったの」

湯本さんは、小柄な体を激しく揺らして答える。

肩にたらした長い髪がゆれて、ジーンズに長袖のシャツという簡素な服も、ゆらゆらとゆれた。

ものずごくやせているのに、ものすごくサイズの大きい服をきているんだ。

そういえば、顔も、埴輪すぎてよくわからなかったけれど、頬のこけ方がちょっと異常な感じだ

「父がお断りしているのでしたら、それまでのことだと思いますけど」

これは早く引き上げたほうがいいかも、と言葉を急く俺に、すがりつくような目で湯本さんはくいさがる。

「でもね、すごく大切な取材なんです。その記事でたくさんの人が救われるくらいの。だから、是非、淳くんのほうからお父さんにお願いしてもらえないかと思って」

俺は一瞬ぞっとした。

なんで俺の名前しってるんだ?

頭の隅に、病院、と浮かんだ。

「病院?」

思わず自分に聞きかえす。

「ええ、よくわかりますね。わたし昨日車にのっていて事故にあったんです。あっちの橋で」