俺はうなずいたんだったろうか?

 よく覚えていない。

 ただ、大人たちの削るイナウの様子を黙ってみていただけだ。

 あれは、たぶん、オプニカのためのイナウ作りだった。

 だから、みんな俺の家に隣接する親父のマッサージ院に集まってたんだ。

 毎日、時間をみつけてはどこかに集まって、すこしづつ作っていく。

 四ケ月に一度のオプニカのために。



「ねえ、なんでこの学校ってイケメン率が滅茶苦茶高いの?」

舞の最初の、なんで? の質問。

昼休みに構内をざっと案内していて、ちょうど体育館に立ち寄ったときだった。

「みんな中学のくせに180センチくらいざらにあるし。ハンサムっていうよりは、さらっって感じの醤油顔だけど、いけてるよね」

ちょうど体育館ではバスケ部の連中が昼練中だった。

確かに連中はデカイ。

主将の田口はけっこうモテル。

でもそれは田口がたんにキャプテンだからだ。

そんなにイケテルようには思えない。テレビに出ている連中たちみたいには。

「それに比べて、女子は地味だよね。顔が小さくて背はあるからバランスはいいけれど、目も鼻も口もちっちゃくて、超地味」

黙っている俺に舞はぺらぺらと喋りまくった。

どう答えたらいいのか、全然わからなくって、ひたすら口をつぐんでいると、ごめんね、とふいに謝られた。

「女子の中に好きな子いるんでしょう?」

申し訳なさそうに八の字になった太い眉がおかしかった。

思わず噴出すと、なんか、面白いこと、あたし、いった? と憤慨された。

俺はたぶん、あのとき、舞をよりいっそう気にいったんだと思う。