ねっとりとした食感が、ゆっくりと体をとおっていく。

わずかな苦味と軽い熱が、お茶の通っていく臓器を順番にきれいにしてくれていっているようだ。

俺は小さく、息をついて話をもどした。

「でも、刺すことで、入れるようにできるのは、ここんなかの、邪だけでしょう?」

正婆は自分の湯のみから、お茶をじくじくとなめている。

アイが俺の傍らでのびをした。

もう十時近い。

‘ここらへん’の連中なら誰でも眠くてたまらなくなる。

「昨日のオプニカのことだって、今日のトラックと、舞の親父さんの乗った車との衝突だって、たぶん、中からの邪のせい・・・」

「違うな」

正婆は、俺の顔をみて、はっきりといった。

「‘ここらへん’で生まれて生きてきた連中の中にも邪はある。わかっとるじゃろう。おまえの中にもわしの中にもある」

正婆は痩せた腹をまた、たたく。

アイが馬鹿にしたように、ふっ、と息を吐く。

「溜まりがいっぱいになってきとるんじゃろ」

「溜まり?」

俺がきくと、正婆は、なんだ知らんのか? という顔になった。

ふっ、と今度はアイが俺を馬鹿にする。

「邪を溜める、溜まりじゃ。内と外の橋の間にある。そこがいっぱいなんじゃ」