舞と、舞の親父さんが、‘ここらへん’にやってくることは、みんなが知っていた。

べつにザビエル安田が前もっていっていたわけじゃない。

舞がくる2ヶ月くらい前から、夢にみ見るるやつが出てきたからだ。

ー転校生がくるー

その噂はあっというまに学校に、そして、‘ここらへん’にひろまった。

大人たちの間では、役場に入ってくる舞の親父さんのことだ。

ー東京の本庁から一年もの出向でくるなんて、前代未聞だー

大人たちはなにかにつけて集まるたびに口々いっていた。

市との合併のときに認めさせた、治外法権の効力がどうのこうのとか、誰か市にかけあってこい、とか、顔をあわせるたびにいいあっていた。

ー大丈夫だろうか?-

ーなあに、気などつかんさ、普通にしていればいいー

ーどこに住むんだ?-

ー役場の裏だ。薬師んとこの離れだー

ーあそこならいい。木で囲めるー

ー囲むこともないさ。なにもかも気のせいで終わるさ。いままでみたいにー

ーでも、娘がいるー

ーいくつだ?-

ー中三だそうだー

ーんんんんんー

ーそんなこと、三下の淳坊がうまくやるさ。生徒会長だ。なあ、淳坊ー