「そういうのって、よく出てくるわけ?」

舞は、映像の話をきくと、目をきらきらさせて聞いてきた。

きれいに片付けられたテーブルの上には、アイスコーヒーをいれたグラスが二つならんでいる。

パパが是非寄ってもらうようにっていってたから、となかば強引につれてこられた舞の家。

その八畳ほどの居間で、俺たちは舞の親父さんのつくったアイスコーヒーを飲んでいる。

「よくはないよ。気分っていうか、その場の雰囲気で出たり出なかったり」

「やっぱりそれってサイキックじゃん?」

「違うって」

舞は随分と元気だ。事故現場から病院までの死にそうな顔や、親父さんをみつけたときのほっとした顔、親父さんと離れるときの不安気な顔、バス停で母親のことを話しだしたときの困ったような顔、そのどれにもあった、暗い感じがまったくなくなっている。

いつもの舞だ。

結局、あのとき、バスはそれほど無理なく止まってくれていたし、女の子も舞も、もちろん無傷だったし、何一つ問題は起こらなかった。

でも、それきりバスの中でも、家に来る道すがらにも、二度と、母親のことを話してくれなかった。

だから、アイスコーヒーを飲んだのをきっかけに、切り出してみたんだ。

映像のことを。

舞は、‘ここらへん’からくる特別な力ならなんでも興味津々だし、俺はとにかく映像の続きを知りたかったから。

俺はアイスコーヒーを一気に半分くらい飲んだ。

舞の親父さんの作ったアイスコーヒーはうまい。

いい豆をひいて、きちんと淹れたコーヒーを冷たくしている。

インスタントとかじゃなくて。

母さんがむかしやってたみたいに。