「じゃあ、あの水の塊はあたしたちのイメージ画像だっただけ?」

舞は大きな目をより大きく見開いて俺の顔をじっと見る。

「そうだよ。見えない連中にはまったく見えない」

俺は、右手でイナウをもって軽く振る。

かさかさと乾いた木の皮の音がする。

俺たちは、昨日オプニカをしたばかりの、川のチャシのすぐそばにいる。

ちょっと遅れたけれど、昨日のオプニカのためにつくったんだから、このイナウを捧げにきたんだ。

山のチャシじゃなく川のチャシなのは、川のほうが寛大だからだ。

山はときおり拒絶したりする。

忘れてしまった俺をしかりつけたりするからだ。

「見えない連中って、‘ここらへん’に住んでいる人以外の人ってこと?」

「住んでない連中でも見えるやつは見える。ただ、‘ここらへん’の連中で見えないやつらは基本的にはいないけど」

「それって」

舞は俺がイナウを川に投げ込もうとするのに気がついて口をつぐんだ。

オプニカの後、からっと晴れ上がった青い空に向かって俺はイナウを投げる。

あんなに必死に削ったイナウは綺麗な弧をえがいて、内の川の真ん中あたりにぽとりと落ちた。

「やり」

自分で自分を誉めからふっと舞を見る。

舞はいちおう、手をたたいてみせたから、質問の続きを口にした。

「それって、霊魂が見えるとかなのかな?」