俺と舞もあわてて後を追った。

 雨は絶えることなく降り続いている。

 でも、一行の2メートル先くらいをついていく俺と舞のところまでは来ない。

 主に佐藤の頭上に厚い小さな雲がつき、ときおり短い雷なんかも鳴らしながら、雨をざあざあと降らせているのだ。

 ぐっしょりと濡れねずみになった佐藤は、それでも先頭で、イナウを必死にふりまわしている。

 その足元近くを水の塊たちは、さらさらというよりは、ぼこっ、ぼこっという感じで流れていく。

 堤防の小石だらけの道、つづくアスファルトの通り、火山灰の踏み固まった小道を、ぼこっと、ぼこっと進んでいく。


 小森や桜井、田口、山中も懸命に佐藤についていっている。

 もう半分の工程が終わった。

 少なくとも、俺の知る限りでは、今回のオプニカはいまのところ、かなり順調に進んでいる。

 すっかり神妙になっている舞の耳元に口を寄せて、うまくいってる、といおうとしたとき、

 雨が止んだ。

 突然だった。

 一行は山の端までもう数メートルというところまできていた。

 あっけにとられて上を見上げる佐藤の頭上で、雲がものすごい勢いで消えていく。

 数秒でなにもなくなった。

 あっからかんと晴れあがり、星が綺麗にまたたく夜空が現れただけだ。

 一行の連中はぎょっとした顔で俺をいっせいに振り返る。

 止まるな。

 俺は声にださずに怒鳴る。

 佐藤はうなずくなり、イナウをいっそう激しく振り回しはじめた。

「シッコロ・カムイ。シッコロ・カムイ」

 声を限りに叫びはじめた。