だいたい、普通なら笑われるよな。
    
   嘘だろ? おいって。

 たった、三キロ弱のところにある高校に通うことがきついなんて。

 たった、半径一キロ四方ほどの、‘ここらへん’ から数時間でも離れることが辛いなんて。

  でも、俺たちでさえ照れて笑っちゃうようこんな事実も、この市のほかの街の連中にはごくあたりまえの話で通る。

   ずっと、ずっと、むかしから。

   ‘あそこらへん,さん’

 ほかの街の連中は、‘ここらへん’を、こんなふうに呼ぶ。

 なんだかよくわからない病気になったり、なんだかよくわからない不幸が続いたりすると、やってくる。

 二つの橋を渡って。

 二つの川にぐるりと囲まれている、

  ‘ここらへん’

     に。