オプニカは、迎え、と、送り、の儀式だ。

むかしから、15歳の男女で行われることに決められている。

変な話だけれど、‘ここらへん’の連中は、15の冬に、男子なら異常に身長がのびたり、女子なら生理が始まったりすることが、とても多い。

だから、オプニカが15歳というのも、たぶん、そんなところだ。

江戸時代なんかは、成人式は16歳で、そのときに幼名を捨てて、新しい名前をつけたというんだから、ふふん、とうなづける。

15歳になったばかりの佐藤が先頭だ。

その後ろに15歳1ケ月の小森。

そして、15歳と3ヶ月の桜井。

次が15歳と4ヶ月の田口で、

最後が15歳と5ヶ月の山中だ。

制服姿の5人は、それぞれの手に2、3本のイナウを持ち、今回アンパの佐藤はさらにツーパと呼ばれる木製のお神酒のはいった深い皿をもっている。

俺は舞の手をひいて、チャシを対面にみる道の端に移動した。

ここなら佐藤たちの邪魔にならずに、ひとつひとつの動作をつぶさに見ることができる。

佐藤たちはどんどん近づいてくる。

誰もなにも喋らない。

すこし顔をうつむかせ、自分の歩いてきて歩数を数えているように口を小さく動かしている。

舞が俺のひじをつついた。

 祝詞だ

俺はささやくように、ほんとうに小さな声で答える。

舞はうなずいた。

そのとき俺は思い出した。

せっかく作ったイナウを家に忘れてきたことを。

鞄に入れて学校までもっていって、そのまま持って帰り、机の上に置きっぱなしにしたことを。