高いところから見渡す体育館は、真っ黒い頭の描く円系の列だ。

その下に光るたくさんの目が、俺をじっと見つめている。

会長になってから、何度もやってきた挨拶だけれど、こうして数多くの生きている瞳に射抜かれるのには、どうしても慣れることができない。

正婆のようなトゥークはいつもこんな状態にあるのかもしれない、とふと思う。

生きている瞳たちの意図が、恐れにあるのか、敬いにあるのか、それとも単なる好奇心にあるのかなんて関係ない。

とにもかくにも、なんんらかの期待をもって見つめられるということは、疲れることだ。

神経の芯みたいなところを、ぐさぐさ刺されいるみたいだ。視線で。

「みなさん、これで学校祭は終了します。そして、イヨマンテが始まります」

俺の、マイクを通った変にきんきんした声は体育館中に響き渡る。

でも正婆は、イヨマンテの中で、マイクなんてつかわずに、最後尾の参加者にまで聞こえるような声をだせる。

なんだか、正婆ばっかりだ。

俺はかなり疲れている。

「わたしがあえて説明しなくても、みなさんは、イヨマンテに参加する意味を充分にご存知でしょう。とにかく防寒に気をつけてください。いまから、お菓子と暖かい飲み物がPTAの御好意でまわっていきます。準備万端にして臨みましょう」

俺そこで、礼をして、マイクのスイッチを素早く切った。

それを合図にしたように、体育館の隅で見ていたPTAのみなさんが、用意していたお菓子と飲み物をくばりはじめた。

俺は、演壇から降りて、小森や桜井、山中、田口のいる一角にゆっくりと向かった。

大人たちと一緒にイヨマンテの準備に出ている佐藤と木崎のいない、学校祭執行部に。