眠りに落ちる寸前、遠くのほうで、どこにもいけない、という誰かの声がきこえたけれど、気に留めなかった。
「オニキスとアメジスト、手に入ったぞ」
翌朝、自分のベッドで目覚めた俺の枕元に、ふいに親父が立っていった。
「薬師が分けてくれた、むかし手に入れてずっともっていたのをくれたんだ。いいやつだろ」
親父は自慢気に、まだ起き上がれずにいる俺の顔の横に、ぱらぱらと石を出してみせた。
俺は無理やり頭をひねって、目を細める。
濡れたような艶をもつ黒い石。そして、紫がきらきらと眩しいアメジスト。
とてもとても小さいけれど、間違いなく本物の石だ。
「ありがとう」
「なに、礼は薬師にいえ。息子がメコンノマコイに使うといったら、金を受け取ろうとしなかったんだからな。おまえによろしくっていってたぞ」
俺は、イワクラのとき、手に小さな箱をもって俺に頭をさげていた教師の薬師の顔をぼんやりと思いだしていた。
なんだか目頭が熱くなってきた。
このお返しは立派なメコンノマコイを造りげることしかない、と心に誓った。
「でもさ、親父、俺、昨日、木崎んとこからちゃんと自分で帰ってこれてた?」
「ああ?」
俺の枕元に置いた宝石をせっせと袋にしまいながら、親父は変な声を出した。
「なにいってるんだ。昨日、おまえは俺が戻ってきたときにはとっくに寝とったぞ。まだ暗くなってないうちだから、5時くらいからだ。ぐっすり眠っていて、夕飯もいらんと食わなかったんだ。木崎んとこなんていってるわけないだろう。夢でも見たんじゃないのか。メコンノマコイの彫りすぎで」
「オニキスとアメジスト、手に入ったぞ」
翌朝、自分のベッドで目覚めた俺の枕元に、ふいに親父が立っていった。
「薬師が分けてくれた、むかし手に入れてずっともっていたのをくれたんだ。いいやつだろ」
親父は自慢気に、まだ起き上がれずにいる俺の顔の横に、ぱらぱらと石を出してみせた。
俺は無理やり頭をひねって、目を細める。
濡れたような艶をもつ黒い石。そして、紫がきらきらと眩しいアメジスト。
とてもとても小さいけれど、間違いなく本物の石だ。
「ありがとう」
「なに、礼は薬師にいえ。息子がメコンノマコイに使うといったら、金を受け取ろうとしなかったんだからな。おまえによろしくっていってたぞ」
俺は、イワクラのとき、手に小さな箱をもって俺に頭をさげていた教師の薬師の顔をぼんやりと思いだしていた。
なんだか目頭が熱くなってきた。
このお返しは立派なメコンノマコイを造りげることしかない、と心に誓った。
「でもさ、親父、俺、昨日、木崎んとこからちゃんと自分で帰ってこれてた?」
「ああ?」
俺の枕元に置いた宝石をせっせと袋にしまいながら、親父は変な声を出した。
「なにいってるんだ。昨日、おまえは俺が戻ってきたときにはとっくに寝とったぞ。まだ暗くなってないうちだから、5時くらいからだ。ぐっすり眠っていて、夕飯もいらんと食わなかったんだ。木崎んとこなんていってるわけないだろう。夢でも見たんじゃないのか。メコンノマコイの彫りすぎで」