「随分できてきたんじゃないか」
家に帰ると、親父が削り台の前で最近すっかり恒例になった、メコンノマコイチェックをしていた。
「でも、昨日また、メノコの鼻、削り落としちゃったよ」
俺は鞄をほうりなげ、コートを脱ぎ捨てると、まず手洗いに直行しながら、親父に報告する。
もう、メノコの鼻を削り落としたのは3度目だった。
その度に削り上げていた、顔の表面をもう一回削り落として、鼻の部分からやりなおさなければならなかった。
「顔の中で鼻が一番高いところだからな」
親父は、削り落としかけているメノコの顔を指先で優しく撫でて、こりゃもう薄くなりすぎだ、次で成功させんとやばいぞ、という。
「わかってるんだけど、刃がうまく乗ってくれないんだ。すぐに滑っちゃうっていうか」
「ああ、わかる。わかる。そういうときはな、米粒とかを糊の代用にして固定に使うといいぞ。仕上げはどうせ軽く焼くから、綺麗に消えてくれるし」
親父のアドヴァイスはなかなか的確だ。
俺は、明るい気持ちで、やってみるよ、とうなづいた。
「この調子ならイヨマンテに間に合うな」
親父は、安心しきった、間延びした声でいう。
でも、俺にはまだ問題山積みだ。
「あとは石なんだけど」
「ふくろうの目か?」
「うん。オニキスとアメジストかな」
「高そうだな」
「親父のエメラルドより安いよ」
家に帰ると、親父が削り台の前で最近すっかり恒例になった、メコンノマコイチェックをしていた。
「でも、昨日また、メノコの鼻、削り落としちゃったよ」
俺は鞄をほうりなげ、コートを脱ぎ捨てると、まず手洗いに直行しながら、親父に報告する。
もう、メノコの鼻を削り落としたのは3度目だった。
その度に削り上げていた、顔の表面をもう一回削り落として、鼻の部分からやりなおさなければならなかった。
「顔の中で鼻が一番高いところだからな」
親父は、削り落としかけているメノコの顔を指先で優しく撫でて、こりゃもう薄くなりすぎだ、次で成功させんとやばいぞ、という。
「わかってるんだけど、刃がうまく乗ってくれないんだ。すぐに滑っちゃうっていうか」
「ああ、わかる。わかる。そういうときはな、米粒とかを糊の代用にして固定に使うといいぞ。仕上げはどうせ軽く焼くから、綺麗に消えてくれるし」
親父のアドヴァイスはなかなか的確だ。
俺は、明るい気持ちで、やってみるよ、とうなづいた。
「この調子ならイヨマンテに間に合うな」
親父は、安心しきった、間延びした声でいう。
でも、俺にはまだ問題山積みだ。
「あとは石なんだけど」
「ふくろうの目か?」
「うん。オニキスとアメジストかな」
「高そうだな」
「親父のエメラルドより安いよ」