「よそよそしいよね。白川さんと」

学祭、つまりイヨマンテの三日前、学祭の最終打ち合わせが終わった後、小森に何気なく言われた。

イヨマンテのある年は、学祭はあくまでその前座のような形になるので、各部活が、模擬店を出したりなんてことはしない。

学年を縦に、つまり一年と二年と三年の各一組が人グループ、のように割って、その単位で、‘ここらへん’の歴史や史跡の紹介なんかをやったりする。

そしてそのまま、山の特設チパへ移動して午後遅い時間から始まるイヨマンテに参加するんだ。

だから、学祭だからといってあれこれと準備をする必要はないので、生徒会としては比較的楽な実行書の内容になった。

もちろん、わいわい楽しめる学祭を希望する生徒もすくなくはないけれど、イヨマンテの前座として行われる学祭に参加することは名誉の一つだから、文句をいうような連中は、もちろん、一人もいない。

「そんなこともないよ。お互い忙しいから一緒に帰るのをやめたくらいで。白川さん、東京の高校受験するそうだし」

俺は書類をばさばさと束ねて、分厚いファイルに通しながら答えた。

受験も控え、忙しいみんなは、じゃ、お先、と速攻で家路についていく。

明日は祝日、明後日は土曜で学校は休み、学祭とイヨマンテはその次の日の日曜日に行われる。

「小森は受験しない組? それとも自信ありあり組みなのか?」

いつまでたっても俺の横で、うだうだしている小森に、俺は会長らしく心配の声音できく。

「どっちでもないかな。受験はするけど自信もない。つまり普通組」

舞に比べると造りの地味な顔をちょっとゆがめて、小森は笑う。

でも、170近い上背に小さい丸い顔がのっかっている体のバランスはとてもいい。

舞がよく、小森ちゃんなら、東京きたらあっという間にモデル事務所からスカウト殺到するよ、といっていたのもうなずける。