[なに、食欲ないのか?」

「うちの蕎麦、なんか問題あった?」

二人がそろって俺の顔を覗き込んだ。

「いや、なんか、嬉しいから、かな」

つい言ってしまった。

だあー、気味悪りィー!

二人にブーングされて、俺は照れまくり、さっさと話題を戻す。

「佐藤はさ、結局さ、なんだったわけ?俺には切られたっていったよな。次の朝、学校で。

それはツゥーパがやたってことだよな。まさか、おまえのヒステリーじゃないよな」

これは、ブーイングへのちょっとしたリベンジだ。

俺はイワクラが終わってすこし落ち着いてから、何度か佐藤にオプニカの件をはっきりさせようとしたんだけれど、ことごとく、試合あるからさ、で蹴られまくったのを、正直にいって根にもってもいた。

佐藤は、嫌そうな顔で、それでも分けてもらった蕎麦は全部きれいに平らげてから、口をひらいた。

「あれはツゥーパがやった。俺のヒステリーじゃない」

「でも、もの、のツゥーパがどうやって切るのさ。もの、には魂はあっても意志はないよ」

木崎がもっともな事をいう。

だてにオオカミの家系じゃない。

「それは俺も思う。でも、まじで動いてきたんだ。あのとき、雨が突然なくなったとき。ツゥーパを持つ手がなんだか変にしびれてきたって思ったら、ぐいっとツゥーパに引っ張られて、気がついたら耳を切られたた。ものすごい力だった。いまも思い出すとぞっとする」

佐藤はほんとうに怖いみたいだった。顔が蒼白だ。