「学校休んだほうがよかったんじゃない?」

舞は太い眉をぐっとよせていう。

この頃、舞は転校してきたてのときのように、眉を剃って整えたり、アイラインを薄く引いたり、口紅を軽く塗ったりなんてことは、まったくしなくなっていた。

太い眉はときおりつながりそうになっているし、口元の産毛も濃くなってくると一瞬髭みたいにみえることもあるけれど、かまわないみたい。

でも、そのほうが全然いい。

強さがパワーアップしてる感じで頼もしい。

なのに、どうして正婆はこんな舞をすきな俺が、佐藤の傷の原因になったといったんだろう。

これまでも、外の人間とつきあったり結婚したりした‘ここらへん’の連中なんて沢山いるのに。

それがいちいち問題になることなんて、まず無いのに。

もちろん、住む場所について話あわれることは多いようだけれど、だいたいは外の人間が‘ここらへん’に移ることで解決されていた。

‘ここらへん’の空気と水を体にとりこみはじめれば、たぶん、どんなものだって変わる。

数年に一人、二人やってくる、‘ここらへん’に移住したい、という連中だって変わる。

そして試される。

風や雨や雲に。

‘ここらへん’でやっていけるかどうか。

やっていけないものは、だいたい病をわずらっていなくなる。

だいたい28日間でわかるんだ。

人間の細胞は28日間ですべて新しくなるから。

舞はもう、‘ここらへん’にきてから、2ヶ月以上を過ごしている。

そしてますます、元気いっぱいだ。

なのに、なぜ?