「だって今回のって地区大会にあがる最後のチャンスだったんでしょ?」

「もうこの負けで中学の野球人生はおしまいってやつ」

「あいつ高校どこいくの?」

「できるから東じゃん」

「野球部あったっけ?」

「すげえ弱いのがある」

「佐藤はいいから、おまえ、ちゃんと放課後にはもってけよ、実行書。もうあんまり時間ないんだからな」

珍しく、しつこく安田に怒られて、俺はしぶしぶ、はい、と返事をした。

舞が、あとで手伝う、と口ぱくでいってくれていた。

うなずきながらも、俺はどうしても笑えない。

佐藤はいったいどうしたんだろう?

ほんとうにショックでずる休みなだけなんだろうか?

なら、どうして佐藤の声が正婆の家で聞こえたんだ?

正婆はなぜいなかったんだ?

木崎は本当に正婆が、俺が舞を好きだから佐藤が怪我したっていったのを聞いたのか?

もしかしたら冗談だったんじゃ?

すぐに隣の教室にいって木崎に聞きたかった。

でもやめにした。たぶん、休み時間にもいかないだろう。

木崎は確かに昨日、そういったのだから。

「混乱してる」

俺は一人つぶやいた。