俺はなんだか、いますぐに舞にあいたくてたまらなくなった。

それがかなわないんなら、家にダッシュで帰って、メコンマコイの彫刻に滅茶苦茶集中したくてしょうがなくなった。

「淳のせいだって、いうんだ」

いいにくそうに顔をしかめて木崎は、咽から押し出すみたいにゆっくりと喋る。

「外のメコンに惚れた淳がいたせいだって」

「なんだ、それ」

俺は、たぶん、叫んでいた。

奥の居間にひっこんだはずの木崎の母さんが驚いて顔を出したから。

木崎は、申し訳なさそうな顔で、いっておいたほうがいいと思って、とだけいった。

それだけいってから、ありがとうございました、と頭をさげた。

閉店なんだ。

そう思ったことは覚えている。

でも、それだけだ。

あとはなにも思い出せない。

何かがパチっと飛んでしまったみたいだった。

頭の中がまっしろ。

ホワイト・アウト。

気がついたときには自分のベッドの中だったけれど、俺は怖かった。

もしかしたら、何かしでかしたんじゃないかって。

オプニカのときに自分の腕を切って捨てた、母さんの親友の娘みたいに。