いま、舞は神妙な顔で俺のすぐ横にいる。

 結局俺は、いつもより一時間も早い、朝5時に起きてイナウをしあげた。

 親父に、ちょっと粗いな、と苦笑いされたけれど、とりあえずは出来上がった。

 それを鞄につっこんで学校へきたんだ。

 教室には、今夜のオプニカに参加する連中が集まっていて、学校が終わってからのスケジュールを確認している。

 昼休み終了のチャイムが鳴るまで、まだ8分ほどはある。

「イナウ、何本あるかな?」

 今回のオプニカのリーダー、野球部の佐藤がみんなの顔をながめて確認する。

 佐藤は今夜、アンパ(支え)をやる。俺も前々回のオプニカでやった。

「親父たちが作り置いてくれてたのと、自分たちで作ったの全部で、十二本だ」

 体操部の小森が答え、ほかの連中、水泳部の桜井、バスケット部の田口、バトミントン部の山中がうなずく。

 オプニカは基本的には5人で行う。

 今回は体育会系の連中担当だ。

 俺は、参加はしないけれど、オブザーバーとして、ちょっと離れてついていく係りだ。

 代々の生徒会長にはそういう役割がある。

 とくに成績優秀でも、格好いいわけでも、人望があるわけでもなき俺が選ばれたのは、家業の影響するところが大きい。前任の萱野んとこも病院だし。その前の、国田のとこは整骨院だ。

 俺は自分の持ってきているイナウのことを言おうかどうか迷ったけれど、必要ないと思ってやめにした。

 万に一つがあることは、まずだいたいは、無い。

 軽い円陣を描いて話あっている5人のちょっと外側に、俺と舞はいる。

 舞の緊張しながらも、興奮しているような表情を、俺は見るとも無しに見ている。