「どうして、役場と正婆のとこに提出するの?」

帰り道、いつものように寄り道した川辺で、舞は小石を投げながら、きいた。

舞の小石投げはかなりうまい。

調子のいいときなんて、三つも四つも水面に円を描く。

この間なんて五つもできて、見ていた俺もおもわずガッツポーズをしたくらいだ。

「決まりなんだ、イヨマンテと重なるときの」

「イヨマンテ?」

今日の舞はちょっと調子が悪い。

さっきから一回も円を作れずに石はことごとく沈没している。

「イヨマンテ。熊送りの儀式。俺たちの儀式の中では一番でかい。最近学校の連中が、イヨマン、イヨマン、ってけっこういってるじゃん」

「おまんじゅうの話だと思ってた」

あれだけ、料理の美味い親父をもつと、人の話のなにもかもが食べ物に結びついていくようになるのかもしれない、と俺は小さく納得する。

「その、伊予饅頭って」

「イヨマンテ」

「イヨマンテって、学校祭と一緒の日にやるんだ?」

また、石が沈んだ。

舞はちっと口をならし、もう次の小石を拾うのをやめて、俺の横に腰をおろした。

桃匂いの、舞のシャンプー。

「そういうときもある。学祭は毎年あるけど、イヨマンテは不定期なんだ」

「前のはいつ?」

「2年前」