舞が、また、ガラス戸をたたく。

顔を上げると、一緒に帰れる? と口ぱくできく。

俺は頭を横にふる。

明日までに実行書を清書して、一部を役場に、そしてもう一部を正婆に提出しなくてはならない。

昨日までさんざん会議して、ようやく決まり、あとは清書だけというところになって、副会長の永田も書記の木崎も、今日は用有り、とさっさと消えてしまった。

「あとは文章にちゃっちゃとまとめちゃってください。会長、得意でしょう?」

「みんなでうだうだ書いてくより絶対早いですよ」

とおだてられえて、ひとりでワープロを打つことになったんだ。

実行書は全部で4ページあまり。

まだ2ページの途中だから、たぶん、あと2時間はかかる。

「あと、2時間はかかる」

声に出して舞に伝えた。

「え?」

「2時間」

「え?」

とうとう舞がガラス戸を開けて入ってきた。

すぐに入ってこないで、口ぱくできいてくれるところが、いい、と俺はやっぱり思う。

「あと2時間はかかるから、先に帰ってて」

俺は申し訳ない感じでいってみる。