親父は愉快そうにいって、あっはっは、と高らかに笑った。

こだまになる。

あっはっは、あっはっは、あっはっは。

「湯本さん、帰ったよ」

そう口をついて出たのは、たぶん、偶然だ。

もしかしたら、楽しげな親父をちょっといじめたかったのかもしれないけれど。

親父は愉快満面の顔をちょっと崩して、そうみたいだな、といった。

「昨日、ラーメンおごってもらったんだ。ネックレス、送ってあげたお礼にさ」

「イワクラでか」

「うん」

「おまえ、真剣に寛大だな」

親父はまた、あっはっはっは、と笑う。

そして、あっはっは、あっはっは、あっはっは、のこだま。

「湯本さん、母さんの親友の娘さんのカウンセリングをして、ここのこと知ったっていってた。
オプニカで片腕失くした娘さん、知ってた?」

「いや、知らんな。そういう話はきいてない。ただ、ここらの植物を煎じてマッサージに使っているのに興味があるっていってただけだからな」

「でも、親父は、湯本さんに色々話したんだろ?」

「話したな」

「母さんに似てたから」

「似てたな」

「オプニカの前の夜も、それだけだったわけ?」

親父は静かになった。