俺はいつも思う。

神の国より、人の国より、そのほかの世界がもっとも大きな世界なんじゃないかって。

そこには、神と人以外のすべてのものがある、もっとも混濁した、それゆえに、もっともタフな世界のような気がしてならない。

ありとあらゆるものに宿る魂たちが、帰る世界。

たぶん、それが一番宇宙に近いところにあるんじゃないんだろうか。

人も死ねば、戻るところは神の国ではなくて、そのほかの世界なのだろうから。


「会長。祭壇、いかすね」

気がつくと舞が目の前にたっていた。

思わず抱きしめた。

細くて柔らかい体からメコンの甘い匂いがたちあがる。

指にからまった髪の毛が自分の体になかに入ってきたらいいのに、と思う。

毛穴を刺して、突き破って、内側全部を舞の髪でうめてしまえればいいのに、と強く思った。

「神聖なんだけどね、ここ、いちおう」

咳払いといっしょに佐藤の声が舞の後ろからふってきた。

「みんな、早いね」

あわてて体を離したけれど、もう遅い。

舞の後ろ、祭壇の前には、佐藤、小森、桜井、山中が勢揃いしている。

「だってもう集合時間すぎてるって」

小森と桜井がにやにやしながら腕の時計をさしてみせる。