横に女をくっつけたまま角を曲がると、自転車に乗った田口と出くわした。

背中に椅子をしょっている。

「おう」

「椅子、でかくねえ?」

「その横のより小さいよ」

気が利いてる。さすが、隣町の中学にファンクラブのある田口だ。

俺は、だよね、とうなづいてみせる。

超地味な顔の女、ライター湯本は意味がわからないようで、ただニコニコ笑っているだけだ。

俺は、ちょっとすいません、と湯本さんの横をすり抜け、田口の自転車の脇にぴったりとくっついた。

「急いでるんで」

言うなり、サドルに飛び乗って思いっきりペダルを踏んだ。

「見に行ってもいいかしら、その、イメクラ」

「イメクラだってよ」

すでにはるか後方で叫んでいる湯本さんを振り返って、田口が笑う。

「行きたいねえ」

「俺も行きたい」

二人でげらげら笑いあいながら、ひたすらペダルをこいでいくと、ふわりと風がきた。

「お、ユーカラだ」

田口が自転車をとめる。

田口の家はユーカラの風を感じる家係だ。

両親ともに、歯医者。