「イラクラってどういう字を書くの?」

俺はさっきからかなり苛々している。

俺の横にぴったりとくっついている、超地味顔の女を、足をかけて転ばせようか、それとも自転車にとびのって蹴散らそうか、ずっと考えている。

今日はイワクラがある。

俺たちは、試験を来週に控えているわりには、かなりの時間を準備に費やした。

イナウも山中の異常なふんばりで、はじじめの目標の20本をたっせいできたし、送り場のチパにも練習をひけてから佐藤や田口が通って簡単な祭壇もつくった。

半年前の幼稚園主催のときなんて、祭壇なし、イナウだって2本しかなかったんだから、上等だ。

オプニカのことは、皆が知ってる。

それの名誉挽回のイワクラなんだ。

約束の時間に充分間に合うよう気合を入れて家を出たとたん、こんにちわあ、とくっついてきた。

ここしばらくみかけてなかった、超地味な顔の女が。

「このあいだのがオプニカで、今回のがイワクラでしょう? 二つの間にはなにか重要な関係があるのかしら?」

親父にきけよ。

腹の中で罵りまくりながらも、俺は、べつに、なんて普通に答えてる。

親父は昨日から西の大都市にいっている。

マッサージ院連合の定期会に出てるんだ。

だから今日のイワクラには参加しない。

送ってほしいものは、すでに頼まれて、鞄の中にはいっているけれど。