低くした姿勢のまま、僕は小走りで進み始めた。
まだ銃声は聞こえてこない。
「とりあえずは様子見だ」
ビルの影に隠れつつ、慎重に前方へと足を進める。
まずは安全な隠れ家を探さなければ。
僕はそう考えた。
ここの区域は一応僕達の軍(僕らを軍と呼ぶのは、企業がわかりやすいようにと案を出したためだ。正しくは会社員である)の安全区域である。が、敵も条件は同じ、単独行動派の人間がここに潜伏している可能性は十分にある。
やはり地獄だ。
安全な場所がない。
僕はため息をついた。
その時だ。
パパァーン
という音が聞こえた。
続いて、
タタタタタッ、タタタッ、タタタタタァン
と、連続して。
思った通りだ。
やはり単独行動主義の敵がいたらしい。
1人で乗り込んで潜伏し、今降り立った味方の何人かに喧嘩を売ったのだろ。
最初の銃声が敵、あとのが味方。
僕は影に隠れ、動きを止めた。
曇った空を眺め、耳をすませる。
「…………」
1分ほど聞き入っただろうか。その後、銃声は聞こえなくなった。
どうやら勝敗が決まったようだ。