1年近く、近所に住んでいるけど…… あたしはいっくんのメールアドレス1つ知らない。

ケータイで連絡とる必要も特に無かったし…… “知る必要は無いかな”って思っていたからわざわざ聞こうとも思わなかった。


「俺、まおに教えてなかったか?」


今更ながら、いっくんが少し驚いたようにあたしを見下ろしながら言う。


「教えてもらっても無いよ。 別に必要とか思わないし」


「あっそ」


そう言って、あたしから視線を反らした。


…… 何よ!

いっくんから“連絡しろよ”って言ってきたから“知らない”って答えたのに…… なんだか気に入らない返事。


あまり気にしないで置いた方がいいのかも知れない。 なんだか疲れそうな感じがする。


「よし、行くか」


「うん」


人も少なくなりあたしたちはゆっくり歩き始めた。


「なぁ……」


「なぁにー」


「傘、意味無くねぇか?」


あはは、あたしもそれは思った。

駅に来た時より、雪の量は増えて傘なんてただのお飾りに過ぎない。


「ただ寒くて、コートに雪が着くくらいだな」


「しょうがないよ。 …… 雪なんだから」