また前のようにいっくんと話せなくなるのなんて嫌だ。


せっかく、一緒のクラスになったんだよ?


いっくんが話しかけてもくれない。
目も合わせてくれない生活なんてこりごり。


あんな生活に戻るくらいなら、今のままがいい。


ちょっとだけでいい。
ほんの少しでいいんだ。


いっくんと短い言葉を交わす……
それだけでいい。



「まお……
もう怒鳴らないからな。
少し俺の話し聞いてくれよ……」


「ホント?」


耳から手を放して、背中を摩ってくれているいっくんを見上げた。


「あぁ、約束する」


「じゃあ……はい」


約束するなら……
これ、やってくれなきゃ信じられない。

左手の小指を立てて、いっくんに差し出した。


「“指切り”するのか?」


「ん、そう」


「俺たちそろそろ17になるのに、指切りってガキかよ」


文句をたっぷり言いながらだけど、あたしが出した左手の小指といっくんの小指が交わった。