「一応、呼び出されたんだから行くよ。
あたしも付いていってあげるから」


「うん……」


東側の階段……
この階段って移動教室くらいしか使わないからあまり人がいない。


シーンッと静まり返っている場所で陽太くん……発見。


「まおちゃん……」


「………陽太くん」


陽太くんはいつもあたしを優しく呼んでくれる、お兄ちゃん的存在。


それに、いっくんがあたしに意地悪しても陽太くんは優しくしてくれる。



「樹と何かあった?」


ほら。
こうやって優しく話しかけてくれて、いっくんと仲直りさせようとしてくれる。


「ちょっとケンカしただけ」



それでもあたしは本当の事を言うことが出来ない。


――― 陽太くんにまで嘘をつく。


あたしの隣に立っている優ちゃんの手を強く握った。


「大丈夫だよ。
すぐに仲直りするから心配しないでね」


すぐに仲直りなんか……出来っこない。


それでも、陽太くんに迷惑かけたくない。