「樹くんには話さないの? 樹くんなら困ったら助けてくれるんじゃない?」
いっくんね……。
本当にあたしの家族はいっくんに頼りっきりだ。
家も近いから何かあったら頼るのがいいのかもしれないのは分かっている。
でも、やっぱり……。
「いっくんには言わない。 ――― 優ちゃんと菜々だけ」
本当は、優ちゃんや菜々に“難聴―――”って話すだけでも怖い。
“耳が聞こえない―――”と分かったら二人が離れていってしまいそうで――― 怖い。
こんな手のかかる友達と付き合うより、もっと普通な友達と遊んだりしたほうがいいって…… 思われちゃうかな?
「菜々先輩なら分かってくれるかもね」
「たぶん、ね」
菜々だけじゃない――― 優ちゃんにも分かって欲しい。
菜々と優ちゃんとはずっと友達でいたい。
こんなあたしだけど…… ずっと友達でいてくれるかな?