「俺のこと、覚えてるか・・・?」

「えっ・・・?」


「やっぱ、覚えてねぇよな・・・。」

「あ、はい・・・すみません」


「いや、いいんだけど・・・。」

先輩の横顔はさわやかだったけど、どこかさみしそうだった。


「俺が、体育委員の時、転んだこと覚えてるか?」


体育委員・・・あれ・・・覚えてる。

「はい、覚えてます。」

「あの時、助けてくれたのはお前だった。」


私が・・・?私が助けたって・・・。

もしかして、あのハンカチのことかな。



「そんなことが、ありましたね。」


「七瀬・・・」

「はい?」


「お前は・・・その・・・俺のこと・・・どう思ってる?」



「どうって・・・」

「俺は・・・俺はな・・・」

先輩どうしたんだろう・・・。


「俺は・・・あの時から七瀬が好きだった。」


「え・・・。」



うそでしょ・・・。先輩が・・・?私のこと好きって・・・??


私、さっきお願いしたばっかりなのに・・・。


夢みたい!!!!!


「俺と・・・付き合ってください・・・」

「はい・・・!」

私がそう返事をすると、先輩は驚いたように私を見た。
そして、とびきりの笑顔で微笑んだ。


空にはまだあの雲が、今度はくっついて漂っていた。