「あっ咲希、遅いよー」



絵里が待ちくたびれたような声を出してあたしを呼んだ



「聞いてよ絵里ー、転んだらあたしと同じ携帯見つけちゃって…」



荷物を置いて
拾った携帯を絵里に見せる



「えー、傷だらけじゃん」

「そしたら電話かかって来て、出たらなんか相手、あたしの名前知ってるの」

「怖っ!!」

「でしょ?!お前誰だよって感じ」



絵里に一通り説明していたら
後ろから呆れたような声が聞こえた。



「それ、俺だっつーの」

「良太?あんた携帯2個持ってたの?」

「違う違う、咲希が拾った携帯が俺の友達のなの、貸して」



傷だらけの携帯を渡した瞬間
慌ただしい足音がして
勢い良く教室の扉が開いた



「あっ、良太!俺の携帯あった?」

「あったよ、どっかのマヌケが拾ってくれたおかげてね」

「マヌケ?!」

「マヌケじゃん、俺が電話しても気づかないし」

「そのマヌケにテストで負けたあんたは、ただのバカってことね」

「は?俺がいつ負けた?!」

「この前のテスト!…あっ、バカだから分かんないか」

「負けてないし!」

「負けたから!」

「負けてないっ!!」

「負けたっ!!」



また始まった…と呆れる絵里をよそに、あたし達は口喧嘩を始めた