俺はどうにもいたたまれない気分になり、やはり来るべきじゃなかったと後悔する。

「あっ…俺、やっぱり帰るから」

脇をすり抜けようとした俺の腕を掴んで、名前を呼ぶ。
久しぶりに伊坂の声で名前を呼ばれてドクンと胸が高鳴る。

「…どうして来たの」
「どうしてって…それは、その…」

今までに聞いた事のない強い口調に、やっぱりもう俺の顔も見たくないよなと、沈んでしまう自分をわかっていた事だと叱咤する。

「どうして、俺に会いに来たりしたの?」
「それは…この前の事、謝りたくて……」

変わらない強い口調に本当の事が言えない。

和輝がわからせてくれたこの気持ちを言いたくて、勝手に足が動いていたにも関わらず、肝心の言葉が出てこない自分が不甲斐ない。