鳴り止みそうにない携帯に、罪悪感を
 感じつつも、帰ろうかと腰を上げた時



 出入り口の所に取り付けられているポ
 ールに座って、薫くんがあたしをジッ
 と見つめていた。



 片手は開いたままの携帯電話。



 今もあたしの携帯は振動を止めないか
 らきっと、薫くんはまだあたしに掛け
 ているのだろう。



 どうしたらいいのだろう。



 あたしと薫くんの距離はまだまだ十分
 ある。



 逃げ出そうと思えば簡単だけど、生憎
 一つしかない出口は薫くんによって、
 塞がれてしまっている。



 どっちみち、薫くんからは逃げられな
 いことは決定的だろう。



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