カウンターの内側にある、自分用の赤い椅子に座っていたあたしの真横に、わざわざ黒い椅子を移動させてきた彼。

にこにこと笑う顔が、近い。



「…ちょっとー?茜ちゃん?
なに、この距離。」


―彼が隣に腰掛けた瞬間、立ち上がったあたしは、即座にカウンターの端ギリギリまで赤い椅子を移動させた。


「…近づきたくないの。」

「うわっ!ヒドくない!?」


ぷぅっと頬を膨らませるのは、高村蛍吾(タカムラケイゴ)
あたし―吉崎茜(ヨシザキアカネ)より、3つも年下の、高校3年生。


そんな彼と出会ったのは、ちょうど1ヶ月前のある日だった。