「茜!」

「小夜子!!」


駅前でキョロキョロとしていたあたしに声がかかる。

振り向くと、最後に会った時より少しだけ大人びた親友の姿があった。



「久しぶりー!
なんか雰囲気変わったね!!」

「茜こそ!
前よりもっと可愛くなった!」

「えー!?何言ってんの!!」



これは小夜子の優しさだ。


華やかな小夜子の横に並ぶと、あたしはすごく平凡。

少しだけ言い訳をさせてもらうと、渉の家に泊まっていたあたしが今着てる服は昨日着ていたもので。


あの店は、1年の内、大晦日だけ24時間営業になる。
その代わり、元日の朝 閉店した後はお休み。
次に開店するのは、1月2日の朝。

つまりあたしが次に帰宅するのは、明日の予定だった。

昨日着ていた服は渉が洗濯してくれていて、ありがたいことに、乾燥機にまでかけてくれていたのだけれど。

ただバイトに行くだけ、と選んだ服だ。


(もう少しお洒落しとくんだった)


買ったばかりのワンピースとか、いろいろあったのに。



「また自信なさそうな顔して。」


あたしが考えていたことを読みとったみたいに、小夜子は クスリと笑う。


「え?」

「茜はカワイイよ。」

「……ありがと。」

「あ、信じてないでしょー!!」


「ほんとだからね?」と念を押す彼女に、はいはいと頷いた。


「ほら、行こ?」

「うん!」


話したいことは沢山ある。

暖かい空間を求めたあたしたちは、近くの店へ足を踏み入れた。