いや、コーヒーを淹れてくれなんて図々しいにも程がある。
あいつだって忙しいんだ。
「トール。今日さ、一緒に飯食いに行かねぇ?」
「ごめん。今日は奥さんの実家に真っ直ぐ行かなきゃいけないんだ。」
えっ?
―――奥さん?
「そっかぁ。残念。じゃあまた今度な。」
ふいに耳に入ってきた時田と同期の梅田の会話。
―――結婚してるのか。
何故だかショックを受けてる自分がいた。
胸の奥で、何かが刺さったみたいに『チクッ』とする。
別に結婚してたってかまわないのに。
なんだ?この痛みは……
年下のアイツが自分より先に結婚してたから?
それとも………
それとも何だ?
別に、アイツが結婚してようがしてなかろうが、どうでもいいことだ。
そんなことより、仕事しないと。時田のこと考えてる場合じゃないんだ。
なのに――――――
「お疲れ様です。松原さん!」