鬼谷先生はゆっくりと話始めた。


―――10年前

 門人であった高津とその一派の四人は、義勇軍に入ることを画策した。


「先生、朱雀道場みんなで義勇軍に入りましょう!」


 そうやって進言してきたが、先生としては義勇軍に入る気なんてさらさら無い。


「無理だ。」

「じゃぁ、門下を抜けさせてもらう」

「簡単に門下から抜けられるわけがなかろうが。」


 そういって鬼谷先生は、門下を抜けるための条件を出した。

「あの竹を斬れ。」


 あの竹林の竹は、普通の竹ではなく、その硬度は鉄に匹敵する。いや、鉄よりは多少柔らかいが、石よりは硬い。

 つまり普通では斬れない。


「もし斬れれば、朱雀道場の免許皆伝と同じ扱いでお前らは独立する実力があると見做してやる。」

「わかりました」


「しかしだ、もし一発で斬れないようならお前らの命はそこで尽きる。」


 度重なる厳しい条件に、その場に重い空気が流れた。

 だが、高津の一声で沈黙は破られた。


「はじめからその覚悟で来ております。やりましょう。」