「きたか。入れ。」


 鬼谷先生の呼ぶ声に応じ、四人は中に入った。


「座れ。」


「失礼します。」


 年の順に正座して座り、先生に一礼をした。


「さてお前ら。いきなり本題に入って良いか?」


「お願いします」


 最年長の勇大が全員を代表して受け答えする。



「今回呼び出したのは他でもない。お前ら、玄武道場の助っ人にならんか?」

「玄武道場…ですか?」


 勇大は何も知らないふりを決め込んだ。そもそも鬼谷先生だってどこまで知っているのか分からない。


「当然、うちは普通、他の道場に門人を渡したりはしない。しかしだ。玄武道場には大きな役割があるのだ。」

「大きな役割?」


「左様。新たな地位を築き上げるという………大体聞き及んでおろう」


 勇大は、玄武道場が義勇軍の巣窟であることはなんとなくわかっていた。しかし、新たな地位なんてさっぱりわからない。


「さっぱり意図がつかめません。」


 勇大は正直に言った。

 すると先生は意外な話を持ち出したのだった。



「お前ら、父親たちが死ぬ前日、この部屋でなにが起こったか、知ってるか?」


「いえ、なんらかの試験を受けた後、先生に呼び出されたことしか知りません。」


 勇大はそこまで言ってみてはっとした。

 そういえば親父はなんらかの試験を受けて、自分が選ばれたんだと言っていた。

 道場内で実力があるものだけが選ばれ、その者たちは夜に先生の部屋に集まれと言われたから行ってくる、と。

 思えばあの後から父の消息は絶たれ、次の日に、死んだということをいきなり家族に伝えられたのだ。