歳哉は勇大に、総祐は助之丞にそれぞれ脇差を返した。


 勇大たちは平静を保ってはいたものの、胸中が穏やかなはずはなかった。


(うそだろ…なぜだかしらねぇが、あの竹は1本斬るのでさえ相当集中しなきゃ斬れなかったのに…!)



 しかし鬼谷先生だけはにやりと笑っていた。


「他人の刀で…しかも脇差で斬るとはな!あぁーあ、ったくせっかく他の奴等を試してたのになぁ」



 なにやら謎めいた言葉を残す鬼谷先生をよそに、歳哉たちは普段通りの態度にもどっていた。


「いやぁ…やっぱ真剣ってすげぇ!初めて斬ったぜ!」

「あぁすげぇ!勇大さんのも助之丞さんのも切れ味抜群だぜ!」



 そんな二人以外、とくに少年たちは、腰を抜かし、多少恐怖におびえていたものの、二人のいつも通りの態度をみて、称賛し始めた。



 大人たちはそれどころではない。なにが起こったかさっぱりわからなかった。


 なにせ全く斬れなかったものを斬ったのが年下だったのだから。